なんじゃくがに(銀黄金)

うちなーぐち(沖縄語)、三線

士族の発音はどこからやって来たのか?

※この記事の内容は個人の推測です

士族成年男子の発音

琉球王朝時代、士族成年男子の使う言葉は、平民や士族女子のものとは語彙だけでなく発音が違うものでした。

平民の言葉には現れない「しゃ」行音、「つぁ」行音が現れます。

例えば平民言葉の「すん」(日本語の「する」)は士族成年男子では「しゅん」となります。

※全てのさ行音がしゃ行音になるわけではありません。

現代では?

現代ではこの発音の形態で発音する人はほぼいないと思います。

ただし、琉球古典音楽の歌詞、組踊の台詞には当時の発音が残っています。

また、日本語の影響で「しゃ」行音は平民であっても使うようになります。特に漢語由来の言葉で。

由来?

「しゃ」行音は口蓋化という言語学的には比較的よく起こる現象で説明ができるようにも思えます。

口蓋化 - Wikipedia

ただ、そうだと考えた場合、成年男子のみに変化が起こった理由が謎のまま残ります。

また「つぁ」行音については別の説明が必要だと思います。

仮説

で、推測ですがこの発音は中国語由来じゃないんじゃないかと思いました。

当時の士族の成年男子は教養として漢文を習っていて、外交のためにも官話を習得しなければならなかった。

それで中国語の発音がうちなーぐちにも取り入れられたのではないかと。


中国語ではcの発音記号で表せる音は日本語表記では一番「つぁ」行音に近いです。

例: 「菜(cai)」-> ツァイ


当時の士族はエリート階級で、現在の日本に当てはめて考えると、カタコトの英語ばかり話す人の中で発音の良い英語を話す人がいる感じなのかなあ、 と想像を膨らませてみたり。


士族成年男子の発音について何か研究があるのを知っている人がいたら教えていただきたく。

琉球諸語の勉強に使っている参考書

概要

うちなーぐち関連の本は電子書籍は殆どなくてほとんど紙の本です。

絶版になっているものも多く、入手困難なものが多いです。

たまに見つけてもプレミアム価格が付いていたり・・

と、言っているだけではアレなので私が学習に使っているものを紹介します。

入門書、文法書

初級沖縄語

初級沖縄語(研究社)

  • 章ごとにまず会話があって、その会話に使われている文法の解説をしていくスタイルでとっつきやすいと思います。
  • まず何か1冊ということであれば個人的にはこの本がオススメです。
  • 巻末に動詞の活用表があるので文章を作る際はここをよく見ます。
  • 作文するには語彙が足りないので辞書が別に要ると思います。
  • 今でもヨドバシやAmazonでも在庫があって入手が容易だと思います。私は沖縄で買いましたが

うちなーぐち しくみと解説(沖縄時事出版)

  • 文法書です。いきなりこれから入るとしんどいかも?会話形式の入門書から入ったほうが良いかも。
  • 初級沖縄語より厳密なのでしっかり文法抑えたいときに。

やいまむに しくみと解説(ばがーすぃまむにプロジェクト)

  • 名前から気づくと思いますが、上記「うちなーぐち しくみと解説」のやいまむに(八重山語)版です。
  • クラウドファンディングして発行されたもので、一般の書店にはあまり出回ってないかもしれません。
  • 八重山語の文法書で現在入手できるものがあるかと言うと、まだこの本が一番入手しやすいかも・・?

辞書

沖縄語辞典(国立国語研究所)

沖縄語辞典

  • 元々紙の辞典であったものを電子化したもの。
  • PDFとエクセル形式で配布されています(無料)。
  • 見出し語が独自の発音記号で読みづらいので私は自分で仮名に変換したものを使っています。

沖縄語辞典 那覇方言を中心に(研究社)

  • 紙のうちなーぐち辞典で現在入手容易かつお手頃なお値段なのはこれくらいじゃないでしょうか。
  • 那覇方言で書かれているので「ダ行」と「ラ行」が一緒になっています。
  • 例を挙げると広く知られている「サーターアンダギー」はこの辞典では「サーターアンラギー」表記です。

どぅなんむぬい辞典(与那国方言辞典編集委員会

  • どぅなんむぬい(与那国語)の辞典。
  • お手頃価格かつ比較的入手容易。
  • 辞典ですが軽く文法の解説があります。
  • 教育委員会が出しています。
  • 現在第2版まで出ていますが、第3版も出したい、ということが書かれています

しまくとぅば普及センターに資料が色々ありますが、文法の解説はあまりなくて、まず慣れましょう的なものが多いです。

しまくとぅば普及センターについて | #使ってみようしまくとぅばナビ – しまくとぅば普及センター

ぼやき

八重山語の辞書を私は持ってないのでお手頃価格のを出してくれませんかね・・

石垣方言辞典とかプレミアム価格で4万円とかのは見つかりますが流石にちょっと。

ChatGPTはうちなーぐちを話せるか?

ある春の日。

ChatGPTと話す私。

会話

私: うちなーぐちで「今日はいい天気ですね」って言ってください

ChatGPT: うちなーぐちで「今日はいい天気ですね」は、「ちゅらいねーさちびちぇーじゃー」(churaī nīsa chibichējā) と言います。


(何語?「ちゅーやいいわーちちやいびーんや」って言って欲しかったけど「ちゅ」しか合ってねえ)

うちなーぐちってわからないのかな?)


私: 沖縄語で「今日はいい天気ですね」って言ってください

ChatGPT: 沖縄語で「今日はいい天気ですね」は、「ちゅらいそばぐちいんさびれぃちゃーい」(chura isogwachiin sabireechaa-i) と言います。


(ちょっと返答が変わったけど相変わらず解読不能

(難しすぎたのかな?こんにちはならイケるやろ!)


私: うちなーぐちで「こんにちは」って言ってください

ChatGPT: うちなーぐちで「こんにちは」は「おっひーさいー!」と言います。


(おっひーってなんやねん)


結論

全然ダメでした。

学習に使えるかとちょっと期待しましたがまだまだ全然。今後の活躍にご期待します。

英語の学習になら使えるんですけどね。

沖縄語辞典のデータに仮名読みを追加したものを公開しています

沖縄語辞典

国立国語研究所が公開している沖縄語辞典のデータがあるんですが、見出しが独自の発音記号になっていて扱いづらいときがあるときがあるので、仮名の読みを追加してみました。

リポジトリ

GitHub - nanjakkun/uchinaaguchi_dict: うちなーぐち辞典(沖縄語辞典)

です。

その中のokinawa2.csvというのが仮名を追加した辞書のCSVデータになります。

基本は平民の発音で表記して、士族の発音がある場合はその発音も併記してあります。

これから

Web上で辞書を検索できる仕組みを考案中。

-> 2024/04/19

https://nanjakkun.github.io/uchinaaguchi_dict/

で公開しました。

まだデータやUIなど至らぬところもあるかと思いますが、徐々に改善していきます。

うちなーぐちの表記ゆれについて(2)

前回、声門破裂音の場合のうちなーぐちの表記ゆれを紹介しましたが、それ以外のものについても紹介しようと思います。

うちなーぐちの表記ゆれについて(1) 声門破裂音 - なんじゃくがに(銀黄金)

助詞「や」

日本語の助詞「は」に大体相当します。

日本語の場合、名詞 + は と続いても名詞の音は変わりませんが、 うちなーぐちの場合は「や」が続くと名詞自体の音が変わる場合もあります。

名詞が短母音aで終わる場合

aの音を伸ばします。

例: はな + や = はなー(花は)

名詞が短母音iで終わる場合

iがeに変わった上で eeとなります。

例: くんちち + や = くんちちぇー(今月は)

名詞が短母音uで終わる場合

uがoに変わった上で ooとなります。

例: ちぶる + や = ちぶろー(頭は)

名詞が短母音eで終わる場合

うちなーぐちではeで終わる単語は余りありませんが、外来語などeで終わる単語 + 「や」の場合はeの音を伸ばします。

名詞が短母音oで終わる場合

うちなーぐちではoで終わる単語も余りありませんが、外来語などoで終わる単語 + 「や」の場合はoの音を伸ばします。

コスト + や = コストー

名詞が長母音で終わる場合

そのまま「や」を続けます。

例: ちゅー + や = ちゅーや (今日は)

名詞が「ん」で終わる場合

例: ナントカさん + や = ナントカさのー

表記法

文語体で書くときは長母音で終わらない場合でも名詞 + 「や」で書くときがあります。このとき表記と実際の発音がずれることに注意。

例:「花や」と書いていても「はなー」と読みます。

また、短母音i, oで変わる場合、漢字表記だと発音通りに書くのが難しい場合があります。

例:「今月(くんちち) + や」を「今月ー」と書いて「くんちちぇー」と読ませる?

助詞「ん」

日本語の助詞の「も」に当たるのが助詞「ん」です。

ほとんどの場合はそのまま名詞に「ん」をつければ良いですが、

「ん」で終わる単語の場合には「ぬん」となります。

例:いん + 「ん」 = いぬん(犬も)

これも漢字表記のときにちょっと困ります。

例:「犬ん」 と 書いて 「いぬん」と読ませる?

日本語式表記

日本語の「の」に当たるのは「ぬ」ですが、表記は日本語式で読みは沖縄式の場合があります。

例:「別れの煙」と書いて「わかりのちむり」

他にも日本語式表記になっていても沖縄式で読むものはあるかと思います。見つけたら追記していきます。